尚安は眼をいからし、こぶしを握って人々に言った。
「小勢をもって大敵に当たるは尋常にては叶ふべからず。精兵の射手はなきか。あれ射払ふて、乱るるところを打て出て追い払え。今日を限りの命にて、活んと思ふ事ありうべからず。」
と躍り上がり、あらんかぎりの声で叫べば、寄り手が進んで攻めあがるのを百余人の精兵が矢種の続く限りと射続けた。的になって立ち並んだ寄り手であるから空矢はひとつもなかった。散り散りに射立てられ、にわかに足もしどろもどろになったところを尚安はきっと見て、時分はよしと声を張り上げ真っ先に討って出る。続く兵はわき目も振らずに一度にさっと駆け下りた。>次へ
氏貞嶽山開城≫大友勢再び襲来:12│3│4