吉田は涙をはらはらと流して、
これは思いもよらぬお言葉でございます。ゆめゆめそのようなことはありませぬ。まして害し奉ることなど、御情なき仰せにございます。私は明日は大島に用事があって、渡海しなければなりませんので、しばしの事とは申しながら、御暇乞申し上げようと御前にまかり越しましてございます。人の言うことさえ誠と思われないのはよくありませぬ。
となだめ申し上げ大島に渡った。これで、少しは御母上の御心もなだめてさしあげたと思った翌晩に殺されてしまったので恨みをかけられるのも無理なきことと人々はささやいた。この謂れにて吉田の子孫も果てることとなった。
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