付録)宗像記追考冒頭文

宗像記追考の冒頭文である。宗仙(占部貞保)の人柄や考えが読み取れる。

宗像記の一巻は家譜代の老人が、依頼を受けて作ったという。彼の老人は永禄中頃より、慶長の初めに至るまでは実際に見たことを確かに覚えて記述している。その時は乱世で、事件の多い時であったので、ただその一部を記録したに過ぎない。永禄より以前の事は聞き伝えたままを記録した。したがって、大まかで、違っている部分もあるようである。老人は自らの若かりし時の事も、時を経て忘却、或いは誤るなどしている。実に無念である。しかし、この一巻があるおかげで、形ばかりといっても昔が遺されたことは幸いというべきである。この書すら遺されず、年を経た後には、宗像殿という人がいたことすら聞き伝える人もいなくなっただろう。誤りがあったとしても、賢くこの書を残したことを、彼の家に縁ある人々は喜ぶべきである。今、この老人(自分)にあっても同じことである。少し記憶していたことも、年老いて皆忘却するが、古い覚書を探り、又昔話に聞き伝えることなどを取捨選択して、ここに記述する。先輩の誤りを正し、改めるのは恐れ多いが、相違があれば見過ごし難く、少々改めてみることにする。